イス・テーブルをはじめ、システム家具やオーダーメイドまでをトータルに手掛ける旭川を代表する家具総合メーカーの株式会社カンディハウス(北海道旭川市永山北2条6丁目、渡辺直行社長、電話0166-47-9934)を訪ね、社長に話を聞いた。
 その前に工場の全体像を見てみよう。北海道・旭川の本社には開発・業務・販売部門と直結した工場で「CONDE HOUSE」ブランドの家具が作られている。大雪の山々に囲まれた旭川は、豊富な森林資源を背景に木工産業が発達した地。深く美しい北の森のとなりで、木の呼吸を肌で感じながら家具を作っている。育った場所の気候や環境によって一本一本異なる木のクセや特性を読み取ることのできる職人と先進機械が巧みに協調しあうことで心地よい家具が生まれる。その工場群はそれぞれ点在する「北工場」「椅子張工場」「東工場」「木取工場」だ。敷地面積約27000㎡(8200坪)4棟の工場の床面積合計は約10400㎡(3150坪)の偉容だ。

 同社の長原實会長はドイツで修業した経験を持つ。また渡辺直行社長はアメリカの市場開拓の経験を持つ。それぞれ両氏の経験を生かし、製品に反映させている。時代は移り今、同社で技能のさらなる向上を目指す姿勢に隔世の感があるが、その時代も誇りに思うという。
 昨今の世界同時不況下で、高品質なシステム家具づくりで有名なドイツのメーカーが倒産した。世界の家具産業の環境はことのほか厳しい。この倒産でドイツの家具づくりの一つが失われた。日本の家具産業も他人事ではない。地元旭川の家具産業は、ピーク時からは減少しているが、技術・技能、家具職人を唯一温存している地域として、全体で守り抜いて技の研鑽に励んでいる。
 2012年10月、創業者で会長の長原實氏(=旭川家具工業協同組合会長)は、「ものづくり産業の振興」のかどで「平成24年北海道功労賞受賞者」として元北海道立文学館館長(初代館長)で文芸評論家の木原直彦氏と共に表彰された。これは、旭川家具の技術力と世界のデザインを融合させ、付加価値を高めようと「国際家具デザインフェア」を東海大学とともに立ち上げるなど、国際的ブランドとしての「旭川家具」の地位を向上させると共に、業界内の技術力向上や新たなデザイナーとの関係強化などの貢献に対するものである。また全国家具工業連合会(現、日本家具産業振興会)会長として、国産家具の修理を広く受け付ける制度を立ち上げ、家具業界の振興に貢献したほか、平成12年から毎年旭川地域の家具職人に呼びかけ、子どもたちと一緒に道産ミズナラの植樹と育林を実施するなど、環境への配慮に取り組んでいる。家具製作の技能に卓越し、優れたデザインと高品質の製品づくりによって、業界内の第一人者と高く評価されており、現場での直接指導や技能士、職業訓練指導員の養成など、後進の人材育成にも大きく貢献したというもの。
 さらに2012年10月には、“次世代のものづくり”を担う満23歳以下の若い技能者が技を競う、第50回技能五輪全国大会が長野県松本市などで開かれた。競技に全国から1097人が参加して競いあった結果、職種「家具部門」で見事に優勝した林香(はやし・かおり)さんは、カンディハウスに2012年4月に入社早々の社員である。昨年の大会に限らず、技能を競う家具やデザイン部門で多くの受賞者が、それぞれの持ち場で得意技を発揮、技の伝承をしている。この技能の保有を会社の財産として守り、誇りにしているという。
 また、旭川の業界をまとめる旭川家具工業協同組合の桑原義彦理事長は、1967年スペインで開催した国際技能オリンピック世界大会で、家具部門で銀メダルを獲得した凄腕の持ち主で、今も業界のリーダー役を務める大先輩である。幸いにも、旭川は長年培われた技術、技能に裏打ちされている証に、広く世界から注目されている家具の創作地でもある。ますますその期待に応え、技術に磨きを掛けなければならない。いい意味で重責を担っていることを日々忘れてはならないという。

“ものづくり”は時が掛かる
 技術は明解に伝える方法にマニュアル化、または数値化すれば、その範囲内できちっと伝えられるが、一方、技能は数値化できるものではない。五感や経験或いは努力が三位一体のもので、数値的に割り切れないのが技能ではないか。さらに会得するには時間と手間が掛かり、機械に置き換えなれない。ハンドクラフト的で、感性に感動を与える技能、その結果、創造が見える形となり、技能の結集として表現できる。
 家具は、人間の手を介在しなければできない。言葉で言い尽くせない形にして初めて表現できるもの、生活空間に求められる最も大事なもの、それが家具である。五感を鍛える“ものづくり”は時が掛かる。
 過去に椅子の大量オーダーに対応するため、一部をアメリカに発注したことがあった。ところが工場従業員は他国民族ゆえに仕上がりを揃えるには苦労した。その点、日本では『きれいに面取りして』の言葉で通じる。そのうえ製品の不揃いはまず出ない。この集約した技能が経営資源で、100人200人の感性が揃う国は、日本以外にないと言っても過言ではない。この強みと技能をさらに磨きを掛け強化したい。 
 ただし、注意点がある。それは技能偏重に陥ってはいけない。大手メーカー製品にみられる、必要ないと思われる機能を付加してもマーケットは決して振り向かない。原因は、ユーザーの感性や力量を無視して余分な機能を開発力や先進性の言葉で技術を押し付けるのは、全くナンセンスな方向と手厳しい。
 多分、家庭の茶の間には、操作ボタンの違うリモコンが三つも四つも置いてあると思う。そのすべてがスイッチやボタン位置が違い、使い手を惑わす極めてマニアックな道具づくりに技術を向けているのではと思う。生身の人間に、“もっと使やすいものづくり”という理念や、人に寄り添い響き合うものづくり、を考える企業が少なくなっているのでは…。
 工業製品は、機能的価値と情緒的価値の二通りがある。機能的では数値的表現が可能で、家具には機能的な革新がないと感じている。イス、テーブルは創造以来、イスはイス、テーブルはテーブルであって、使い道に何の変哲もない。家具は性能で買うものではなく、多くの人はデザインとか色合いや杢目に個性を求め、購入者自身がコーディネイトする情緒的な動機が強いと思う。
 日本の木製家具産業は、木材加工業と定義されるが、欧州では、デザインの分野にカテゴライズされる辺りが大きな発想の違いがある。デザインという語彙は極めて抽象的で、誰彼なくデザインという言葉を発するが、我が国ではおそらく5、60年前から使われ始めた言葉ではないかと思う。でも外来語であったことによって、日本はデザインに対する特殊な位置づけをしているような気がする。例えば、縄文時代の人間でも、尾形光琳でも今様に言えば皆なデザイナーだった。ただ当時デザイナーという言葉がなかったし、伝統工芸でトップになると人間国宝になったり、芸術院会員になったりする。だからどんなに偉いデザイナーよりも、人間国宝の方が偉い響きになるが、それは同じ世界なのだ。その辺が、ある意味で日本の業とまでとは言わないが、ボタンのかけ違いみたいなものがあるのでないか。(編集後記=氏の話は正に佳境に入っていたが、編集の都合で“肩の凝らない分かりやすいデザイン考”といった趣で、テープに録った話し言葉のままにできれば稿を改めたいと思う。)
 *カテゴライズ【categorize】[名](スル)分類すること。カテゴリーに入れること。「本格推理に―される小説」(デジタル大辞泉)

【会社概要】
 設立 1968(昭和43)年9月14日
 資本金 1億6千万円
 代表取締役会長 長原 實
 代表取締役社長 渡辺 直行
 従業員数265名 (男200名 女65名)

【事業内容】

 住宅・オフィス・コントラクト家具、特注家具及びホームファニシング関連商品、インテリアアクセサリー、インテリアデザイン・設計・施工 インテリアデザインの企画・設計・施工・及び工事監理
 売上高 28億2000万円(平成23年実績)
 本社・工場:北海道旭川市永山北2条6丁目
 支店:旭川、道央、東京、東海、金沢、大阪、福岡
 関連会社
  (株)カンディハウス札幌、(株)カンディハウス横浜、(株)カンディハウスナゴヤ、(株)京都カンディハウス、CONDEHOUSE USA、CONDEHOUSE EUROPE、(株)コサイン、(株)IA研究所

【会社沿革】
1968年9月 
株式会社インテリアセンター設立。
12月 工場竣工
1969年1月
社員12名で創業開始
1975年5月 
本社第3期工事完成。脚物家具、棚物家具生産の量的バランスで、企業ポリシーがほぼ確立される、1978年9月 創立10周年記念「Hockファニチャーショー」を東京日比谷・日生会館で開催
1980年1月
北海道家具サンフランシスコショールーム開設
同年3月 
横浜市に横浜営業所/ショップを開設
同年9月 
本社第4期建設工事が完成。本社とショールームを拡充
1983年5月 
東京都代々木に(株)カンディハウスを設立
1984年3月 
米国サンフランシスコに現地法人「CONDEHOUSE 」を設立、アメリカ市場進出への足掛かりとする、名古屋市に(株)カンディハウスナゴヤ設立
1986年6月
大阪府吹田市に大阪支店/ショップを開設
同年8月  関連会社一級建築士事務所(株)IA研究所を設立
同年10月 
東京都千代田区に東京営業本部を新設、京都市に(株)京都カンディハウスを設立
1987年4月 
福岡市に福岡支店/ショールームを開設
同年7月
金沢市に(株)カンディハウス金沢を設立
1988年3月 
札幌市に(株)カンディハウス札幌を設立
同年9月 
本社新社屋及び椅子・テーブル製造ラインの新工場建設、創立20周年行事「Spirit of design」を開催
1990年10月 
北工場(オフィス家具製造ライン)建設
1991年4月 
社員寮「OAK HOUSE」建設
1997年6月 
本社ショールームを全面改装
同年11月 カナダ・アーコナス社との提携によるモールド発泡ウレタン技術を導入
1998年1月
(株)カンディハウス札幌移転、新社屋完成
同年7月 
横浜市に(株)カンディハウス横浜を設立
1999年4月
札幌支店(現札幌支店/ショップ)移転
2001年4月 ISO9001認証取得
2002年4月 
名古屋市に名古屋営業所を開設
2003年9月
東京都新宿区に新ショップ(現東京支店/ショップ)を開設
2005年1月
ドイツに現地法人「CONDEHOUSE EUROPE」を設立
同年6月 
「株式会社カンディハウス」に社名を変更
同年7月 
(株)カンディハウス(東京)、(株)カンディハウス金沢の2社を経営統合、大阪支店/ショップ 大阪府大阪市中央区に移転
同年9月 
道央支店/ショップ移転、「CONDEHOUSE EUROPE」ドイツ・ケルンにショールーム開設
2007年1月 
ペーター・マリー氏デザインによる初のグローバルブランドシリーズ「tosai LUX」を、3年目の出展となるドイツ国際家具見本市2007で発表、韓国・クリア社が初来場しアジア進出がスタート
2008年10月 
創立40周年行事として国際フォーラム「ASAHIKAWA Polyphony,2008」を開催
同年11月 
福岡支店/ショップ 移転
2010年1月
「CONDEHOUSE EUROPE」ドイツ・コブレンツにショールームを移転
2011年4月
仙台支店/ショップを東京支店/ショップに統合
同年6月
東京都品川区にインテリアギャラリーippon[一本]を開設。新ブランド・ippon、産地・旭川の木工品、新ヴィンテージ事業を展開
2012年6月 
(株)カンディハウスナゴヤと東海支店/ショップを移転し、名古屋市中区に共同運営の「カンディハウス名古屋ショップ」を開設

◆カンディハウス
◆国際家具デザインフェア2011(IFDA) 
ゴールドリーフ賞・シルバーリーフ賞などの入賞入選作品
◆「技能五輪全国大会」で金メダル獲得、喜びの林香さん
技術に裏打ちされたデザインと感性
技術に裏打ちされたデザインと感性
北の総合メーカー(株)カンディハウスを訪ねて
家具作りの本質を追及する
トータルな取り組み
自動四面鉋盤(GUILLIET)
薄挽き横バンドソー
フレームソー
長原 實会長   渡辺直行社長
本社
本社工場
CNCワークセンタ(PADE)
CNCワークセンタ(PADE)
NCルータ(KITAKOコーポレーション㈱)
NCルータ(㈱平安コーポレーション)
パーツの手仕上げ作業
パーツの手仕上げ作業
隅木のカット
ハンドサンダーで仕上げ(フィンランドからのインターシップ)
細かい部分の手仕上げ
成型用高周波プレス
フレームソーの刃物セッティング
8軸モルダー(飯田工業㈱)
モルダー工程工場のひとこま
バグフィルターからの還流空気口
制作の出番を待つ銘木
“一本技”工房作品の一品、天然木のモザイクに絶妙な味が
ホゾ加工機(Balestrini
ランニングソー(Giben)
単板のスプライサー(KUPER)
単板のトリミングカット、目視で慎重に
パネル仕上げ工程
パネル用コンベヤ・ホットプレス(㈱山本鉄工所)
スライドソー(ALETNDORF)
ダボ孔加工機(GANNOMAT)
NCルータテーブルで、セッティングも慎重に
NCルータ(KITAKOコーポレーション㈱)
バグフィルター(井上電設㈱)、装置全体に断熱、遮音等の特殊塗料施工
北工場
北工場のひとこま
旭川“一本技”工房のひとこま
 
ボーリングマシン(丸仲商事㈱)
複合NCルータ(SCM
出荷前の最終チェック製品
検品と梱包ライン
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Woodfast 13.1
工場案内中のスナップ=CPI開発本部の山下陽介氏(左)と伊丹英明氏(右)/取材協力の㈱コーエキ野田正峰氏(中)