集成材の大手メーカー山佐木材株式会社(鹿児島県肝属郡肝付町前田2090、佐々木幸久社長、0994-31-4141)は、このほどCLT生産用に「高周波幅ハギ装置」を導入したので新工場を訪ね、佐々木社長(写真)に話を聞いた。
 同社は、国内で初めてJASスギ構造用大断面集成材の認定を受けてから20年余り、木造躯体部の製造から加工・現地建て方まで施工し、公共施設や民間施設は1000件を超える着工実績のある企業であるが、これまで大断面集成材で柱と梁材は立派に構造材として建築設計の要求を満たしているが、床工事については根太を入れた上にフローリング等を張る工法は強靭な躯体に対して、床だけをみると何か不安定さというか、物足りなさを感じていたという。
 そのことは、今から14年前の2000(平成12)年に初めてオーストリアのKLH社でCLTを実際の目で見て、これからの大型木造建築の床や壁の材料として、これ以上のものは無いと直感したという。
 その後同社は、数年前にラミナを直交した集成板いわゆるCLTを試験材に使い、壁としての性能試験データしか取らなかったが、今思うと当時の経験値がCLT商品化のコンセプト作りの基礎になっている。
 今後もさらに我が国に適合する建築材料のあり方を模索しつつ、たえず技術や用途の開発に取組み、ユーザーに安心と信頼される物づくりに反映したいとしている。
 そして今日、メディア等に取り上げられているCLTについては、全てCLTで施工する中・大規模木造建築物を指向する前に、当面は木造並びに非木造工法の中に取り入れてもらう部材としての適材適所の役割が先ではないか、と考えている。
 そこで今年8月25日~28日の3日間、工場敷地内に林野庁委託事業の一環で行なった非木造(鉄骨)の床組にCLTを敷設することを想定して、スギ材CLT7層7プライ、サイズ1.8m×3.6m×12枚を使い、鉄骨梁との接合や床と床の接合について施工性確認実験を行ない、実務に於いて問題となる加工や施工性のテストも行なった。(写真参照)
 さて今回、導入した高周波幅ハギ装置については、まずCLT生産ラインのシンプル化、合理化を目的にしている。装置の主な仕様は、ラミナの長さは4mまで、幅は45~180㎜、厚み15~45㎜のラミナを挿入する。幅ハギ後の受け取側にランニングソーが装備され任意の幅寸でカットできる。幅ハギは最大8メートルの板幅まで可能で、当面の生産量は8時間で約40㎥を予定している。
        (次回は本社工場を紹介の予定) 
CLT生産用
  据え付け間もない高周波幅ハギ装置C-70F型 (㈱太平製作所)
鹿児島県肝付町・山佐木材株式会社の新工場を訪ねて
林野庁委託事業:CLTを用いた木床の施工性確認実験(平成26年8月)
以下の写真は施工工程のカット:同社HPより
CLT法人化への経緯
 CLT(Cross Laminated Timber)については、2012(平成24)年1月、銘建工業㈱(岡山県真庭市、中島浩一郎社長)、山佐木材㈱(鹿児島県肝属郡肝付町、佐々木幸久社長)、協同組合レングス(鳥取県西伯郡南部町、中西康夫代表理事)の3社が、中心的役割を務めてCLTを建築構造材として使用できるにようにすること、将来はCLTによる中層や大規模建築を可能にすることを目的に任意の協会を設立した。
 その後、2014(平成26)年4月に「一般社団法人」化に至るまで各方面にCLT建築構造材について広く喧伝するためのフォーラムや2013(平成25)年12月には、CLT構造躯体で大臣認定取得による3階建て実証棟(高知県大豊町、おおとよ製材社員寮)の建築等を通して活動してきた。
 こうした中、農林水産省は2013(平成13)年12月20日、CLT(直交集成板)の日本農林規格を制定した。これにより中・大規模の木造化を可能にするCLTは、国の成長戦略の中でも早期の実用化が求められて、異例のスピードでJAS規格化が実現した。2014(平成26)年1月に当該JASマーク付直交集成板の流通が始まった。
(文責編集子)
        
(一社)日本CLT協会
実験用の鉄骨フレーム10.8×7.2m (3.6mモジュールを想定)
5層5プライのCLT製品(同社HPより)
山佐木材株式会社
施工時間は敷設、調整、クロスビス接合まで、1枚当たり15分程度の施工性
スギCLT(1.8m×3.6m)7層7プライの木床を鉄骨フレームに縦横12枚敷設
woodfast '14-10