一般社団法人 日本木工機械工業会

新春講演会と新年祝賀会開く
 講演会終了後、出席者は席を移し新年祝賀会に臨んだ。(一社)日本木工機械工業会・
井本希孝理事長の挨拶で始まり、来賓の石田祝稔衆議院議員、原田義昭衆議院議員、国
土交通大臣太田昭宏氏(代理・大久保智広秘書)、経済産業省産業機械課長佐脇紀代志氏、
林野庁木材産業課長小島孝文氏、国交省住宅局木造住宅振興室長内田純夫氏、日本合板
工業組合連合会会長井上篤博氏が祝辞を述べたあと。日本輸入木工機械協会会長安居実
氏の乾杯で開宴し歓談の輪が広がった。
来賓祝辞のあと、同、工業会が主催する日本木工機械展の発展に寄与されたとして、
日本輸入木工機械協会(安居実会長=ホマッグジャパン㈱社長)と、国産材製材協会
(佐川広興会長=協和木材㈱社長)の2者に対して感謝状贈呈が行なわれた。
 (写真上、井本理事長(左)から感謝状を受取る安居実氏と佐川広興氏代理の西村
勝美事務局長)
鈴木信哉氏が「我が国の木材の現状と将来展望」について講演
 長年に亘り林産畑を歩んできた氏は、初めに最近国内で3件の木造消防署の完成をみたことは時代が変わりつつあると思う。そこに勤務する署員は木に囲まれリラックスができると評価が高い。戦後の復興に多くの輸入材に頼ってきた我が国だったが、戦後の植林木が育ち用材として使えるまでになった。来日する外国人は飲食の際にだされる水は有料だと思われたほど、我々は緑と水はただと認識しいてる。本題の「日本人は木を使っているか」といえば海外と比べれば極めて使用量は少ない。古くは山林から薪炭用に木を多く伐り山は荒廃が進んでいた経緯を語り、今日の木材利用をレジュメに順って解説した。
日本の本当の木材需要とは
①日本人は木を使っているか?
・主要国の中で日本の木材使用量は少ない。
・特に我が国の薪炭材利用割合は他国と比較して低い。
木材需給の変遷
・戦後の経済成長に伴い、昭和40年代後半まで製材用材を中心に堅調に推移、一方で生活様式の変化により薪炭材が減少した。
・逼迫する木材需給に呼応して外材輸入が増加、昭和48年にピークを迎え、オイルショックを機に漸減傾向にある。
・昭和60年代には住宅需要の増加により1億㎥を堅持、バブル崩壊後低迷、近年「環境」面からの需要でやや回復した。
住宅建設に依存する木材産業
・製材用材の需要は新設住宅着工数の動向に大きく影響される。
・新設住宅着工戸に占める木造住宅の割合は5割。
木造住宅の現状
・新設住宅の5割が木造。戸建てでは8割が木造。
・8割の国民が木造住宅を選好。
日本の住宅需要
・持家、分譲住宅で木造率が高い。
住宅における木材使用の推移
・地方型の住宅に比べ都市型住宅の木材使用量は少ない。
・新設木造住宅の平均床面積は、減少傾向で推移。木造住宅1戸当たりの木材使用量も減少に。
在来工法における部材別木材使用量及び割合
・柱の集成材使用量が急速に増加し、シェアは5割に。
・土台の外材製材が5割でベイマツが主体に。国産材はヒノキが主体。
・梁、桁の国産材シェアは5%で、ベイツガが主体。
・羽柄材、下地材は構造用合板の利用増加を伴い、羽柄材については減少傾向にある。
・製材はスギが主体で合板は北洋材が主体に。
・造作材、仕上げ材は国産、外材で分け合う量。
公共建築物における不燃化等の動き
・都市建築物の不燃化の促進に関する決議(衆議院、昭和25年4月)。
・木材資源利用合理化方策(昭和30年1月、閣議決定)。
・耐火建築物の木造化について(建築基準法関連告示の改正)平成5年5月以前…簡易耐火建築物について、木造による建築は不可。同年6月以降…準耐火建築物の技術基準を設け、木造(集成材、単板積層集成材)でも建築可能とする。
・平成12年以降…準耐火建築物の技術基準に一般製材を追加し、一般製材品による建築を可能とする。
公共建築物木材利用促進法ポイント
「森林の適切な整備及び木材の自給率の向上に寄与する」としており、公共建築物等における木材利用により木材の自給率の向上が明記されたことがポイント等。
 本項の最大のポイントは、当該法律では、基本方針は農林水産大臣と国土交通大臣が定めるとしており、国の営繕を管轄する国土交通省も所管官庁であることである。
 都道府県でも林務部と土木部が共同で実行することになる。相反ではなく共同である。
日本の建築需要
・住宅は建築着工棟数では多いが、床面積ではその割合は小さくなる。
・2階建て以下の建築物は棟数は多いが、床面積ではその割合は小さくなる。
住宅を巡る最近の動き
・住宅瑕疵担保保険制度 設計施工基準→地盤調査、地盤補強の必要性の拡大。
・改正省エネ法。
・「サービス付き高齢者向け住宅」制度の創設→国庫補助事業の創設。
木造化のターゲットは「公共建築物
・建替え期に入った公共建築物。
木材利用事例集
・消防施設、店舗、駅舎、空港、高速道路SAなど、学校、社会福祉施設、庁舎など各地の写真を紹介する。
杉について
・全国の樹種別の資源量は杉が最大。
・資源量、素材生産は東北と九州が双璧で、資源量は東北、素材生産は九州。
家具・建具分野
・建具・家具用製材品が、国産材、外材ともに減少する中、輸入製品が増加傾向で推移。
・建具の原料のスブルースが主体となっているが、最近は和室の減少等で取扱量は激減している。
立木からの歩留りは、どの位向上するか
・A材からD材まで搬出すると森林資源の利用歩留りは向上している。
・搬出して量をとりまとめることで、C材やD材の販売にも有利。

林業生産の採算性を向上させるには、どうしたらいいか?
 今まで、最も重要視してきたのは、販売単価をあげる、そのためには採材を考えるが基本だった。合板、集成材用のB材が登場して、生産性をあげるという方向に急変し、多少の曲がりはいいとして、2m、4mに画一的に採材するといった例もみられるようになった。山主のために何がためになるのかは、生産性を維持しつつも、販売総額をあげることと考える。
 盛んにA材、B材、C材、D材を万遍なく使うとのキャッチフレーズだが、A材比率の低下やB材のみの出材、C材、D材の放置など現場段階では課題が多い。
 まず、集材を実際に実行している現場では林地残材は無いに等しい。全幹集材では車両系であれ、架線系であれ、一旦林道・作業道端まで運ばれる。あるのは土場残材である。林地残材は、切り捨てでないとすれば、梢端部の切り離し寸法が大きいのが原因である。
 スギ・ヒノキは柱材寸法未満の木は16㎝未満で切り離して林地残材、又は元玉が16㎝未満は切り捨てとなり林地残材となる。本当に利用価値はないのか?合板業界が機械の性能を向上させて13㎝から受入れる機械を導入したのでという意味ではない。
 企業系の原木市場とりわけ優良材産地を別にして、森林組合系、協同組合系の市場では、6㎝~14㎝までの小径木一般材の販売単価が示されている。優良材産地の製材業界は、末物市場を相手にしない。土木用材、造園用材として取引きされているが、この買受け会社の経営が悪い訳ではない。特に本末同じ寸法の6~10㎝は高く取引きされる。N原料材を3,000 円/㎥で取引きしたり、スギの一般材が1万円/㎥を割り込むことになったと言っているが、小径木であっても6,000円/㎥~13,000/㎥位で取引きされる。又、本単価の取引きも多く、㎥換算すれば一般材よりも高い価格が設定される。しかも、丸太を探している会社も多い。残念ながら、需要には地域差が大きく、東日本が高く、西日本は低い状況にある。パルプチップ用のC材に1.5m以上求められるのは、単にフォークリフトの爪にかからず、チップ工場への材の搬入の利便性による。一般にD材である針葉樹であっても6,000円/㎥で買取る薪業者も出てきている。こうしたことを考えれば、A材比率45%~50%、B材比率20%、C材・D材比率15%で、85%ぐらいまで歩止りをあげ、販売総額に貢献できることとなる。全幹で土場まできているのだからコストはそんなに変わるものではない。種分けの手間はかかるのが、中間土場を利用すれば解決できるのでないか。現に長野県東信木材センターのカラマツをみると、C材比率は市場の5%、山土場から見ても15%まてで、そのほとんどは山土場から直送されている。
 そのほか、一目選木、木材の利用事例、カラマツ2m材の価格、戦後の国民総生産と木炭生産額の割合の推移、化石エネルギーの価格の推移、家計と木質バイオマスエネルギー、薪エネルギーの利用・薪の価格、家具・建具分野の木製うち窓の取組、木材の利用事例集などから数表の説明まで範囲の広い項目に亘った。
木工機械業界における期待
①プレカットCAD技術
②広葉樹の加工復活(フローリング時代)
③木材乾燥業
④合板の需要は途上
⑤物流の機械化
⑥加工業の自動選別機
⑦3F以下は地域の木材業
⑧周辺産業との協調
⑨L専市場・チップ工場
⑩薪ストーブ工業
等を上げる中でもCADの重要性を強調する。
     
(編集上、数表・グラフ等は割愛した)

     
鈴木信哉(すずき しんや)氏プロフィール
1957(昭和32)年  秋田県出身
1981(昭和56)年3月 北海道大学農学部林学科卒業
   〃   4月 農林水産省 入省
2008(平成20)年7月 林野庁林政部木材産業課長
2010(平成22)年7月 林野庁国有林野部経営企画課長
2012(平成24)年7月 中部森林管理局長
2014(平成26)年4月 (独法)森林総合研究所理事

 
新 年 祝 賀 会 も 開 く
左から井本希孝氏、   石田祝稔氏、     原田義昭氏、    佐脇紀代志氏、    小島孝文氏、     内田純夫氏 
井上篤博氏、
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Woodfast'15-2
(一社)日本木工機械工業会(名古屋市中区大須4-11-39、井本希孝理事長=飯田工業㈱社長、電話052-261-7511)は、1月20日、午後2時45分から東京・港区芝公園の機械振興会館6D-4号室で新春講演会と同館倶楽部で新年祝賀会を開き、木工機械業界関係者、学識経験者、行政関係者ら70名が出席した。
 講演会は雨宮礼一東京事務所所長の司会で進められ「我が国の木材の現状と将来展望」と題して、独立行政法人森林総合研究所 理事(企画・総務担当)の鈴木信哉氏が講演した。
乾杯の安居実氏