岐阜県が2011(平成23)年3月に策定した「第2期岐阜県森林づくり基本計画」に基づき、これまで“植えて、育てて”きた森林資源を、今後は“伐って、利用する”という、林業活動を重視した「生きた森林づくり」に取り組んでいるが、その一環として、これまで間伐等で伐採されながら利用されずに森林内に放置されてきた小径木や根元材などの未利用木材(いわゆるC・D材)等の利用を促進するため、国の基金を活用するなどして「木質バイオマス発電プラント」の整備等を支援してきたもの。
 その成果が発電事業者の(株)岐阜バイオマスパワー(岐阜県瑞穂市牛牧758、伊藤勇社長、資本金4500万円)による県内初の未利用木材を主燃料とする「木質バイオマス発電プラント」が完成、昨年末の2014(平成26)年12月に商業運転を開始した。
 この木質バイオマス発電プラントは、創業71年になる地元の染色加工会社大手の岐セン㈱(同所、伊藤勇社長)が中心となって敷地内に設立したもので、事業の主体となる発電会社は㈱岐阜バイオマスパワーが運営する。

未利用材をチップ化
 今回、取材で訪問したのは燃料供給会社として木材チップを供給する、㈱バイオマスエナジー東海(岐阜県瑞穂市牛牧581、藤村重樹社長、TEL058-372-2111、資本金3000万円)。藤村社長に現場を案内してもらった。同氏は、上之保国産材加工協同組合(岐阜県)の専務理事当時に、バイオマス発電は近い将来の事業として見据えていたところへ、FIT(再生可能エネルギー固定買取制度(経済産業省・資源エネルギー庁)が2012(平成24)年7月1日にスタートした。これを機に2013(平成25)年4月を目途に本事業の会社設立に向けて、バイオマス燃料の供給者側として携わった。
 まず、発電用ボイラに供給する用材は、間伐などによって森林に放置している木や枝と根元部分の未利用木材を、林業でC・D材と呼ぶものと、道路建設など工事に支障になるために伐採した木質系木材を、固定価格買取制度では「一般木材」としている。この一般木材を同所のボイラは使用している。この他のバイオマスには「農業・畜産・水産系」と「建築廃材系」の分類がある。

森林資源をオール岐阜で活用!
 同社では燃料用材の買い入れは、自社でチップ加工するためのC、D材と他所でチップ化したものも買い入れ、全てトン当たり計算で購入する仕組みになっている。ただし、持ち込まれるものは全て買い入れOKではなく、間伐材などは出材地域を証明するものが無ければ購入できない。またチップも同様に、何処の木材をチップにしたのかの証明を必要としている。
 要するに出所が定かでないものは購入できない。このことは、会社設立当時に岐阜県内の森林組合やチップを集積する組合など、既存の森林事業者に新たな収入を生むこが大切になる。そこで森林資源の活用を“オール岐阜”をコンセプトに協定を結び、地域の活性化に貢献できればと願っているからだ。
 ちなみに、発電した電力は全て特定規模電気事業者PPS(Power Producer and Supplier)へ売電する。売電価格はFITによる設定価格で未利用木材が1kWhあたり32円(税別)、一般木材が24円(同)の二種類だけ。これをもとに売電収入を計算すると年間に約12億円になると見込んでいる。
 なお、岐阜県内には上記よりも小規模なバイオマス発電所が2箇所稼動しているが、いずれも自家消費と隣地施設への電力供給で、余剰分の売電も小規模であり、本格的なバイオマス発電所は当設備が初となる。

木質バイオマス発電プラントの概要
・総事業費:約28億円(森林整備加速化・林業再生基金
 14.5 億円(資金融通12.1億円、補助金2.4億円)、銀
 行融資12億円、自己負担2億円)
・事業主体:㈱岐阜バイオマスパワー(発電事業者:
 平成25年4月19日設立)
・㈱バイオマスエナジー東海(燃料供給事業者:平成
 25年4月19日設立)
・整備施設:発電施設(発電出力6,250kW/送電出力
 5,200kW、一般家庭11,000世帯分)
◇チップ製造施設
・木材使用量:約9万㎥/年(内訳=未利用木材 約6万
 ㎥、一般木材約3万㎥)
・新規雇用:2社で15名程度
・備 考:本施設は、平成25年9月19日に経済産業省か
 ら再生可能エネルギーの固定価格買取制度における
 発電施設の認定を受けている。

藤村重樹氏略歴
1965(昭和40)年 岐阜県武儀郡上之保生まれ
        (現在の岐阜県関市上之保)
1987(昭和62)年 名古屋商科大学経営学部卒
1987(昭和62)年 上之保国産材加工協同組合設立
        同組専務理事 
2014(平成26)年 同組理事長
2013(平成25)年 ㈱バイオマスエナジー東海 社長
   〃    ㈱岐阜バイオマスパワー  取締役

木質バイオマス発電プラント工場正門
未利用素材土場とチップ加工工場棟(左)
未利用のC・D材
素材投入→チップ製造機(㈱)シーケイエス・チューキ)
篩あとの粗いチップの再チッパー機(同)
チップ加工ライン(同)
チップ工場からベルトコンベアでチップヤードへ
チップを種別するヤード
工場を案内してくれた藤村社長

工場外の手作りの喫煙所が素朴でいい
いよいよ燃料ボイラに送り込まれるチップ投入口
発電プラント・木屑焚ボイラ(㈱タクマ) 
バグフィルター及び灰サイロ (P1)
蒸気タービン及び発電機 (P2)
(P1・2 出典:㈱バイオマスエナジー東海HP)
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