株式会社コーエキ

woodfast 14-7
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潜在する新たな可能性とチャンス

規模が縮小傾向へ
 キシレクスポは2年に一度開催され、リグナ・ハノーバー展と交互に開かれている。ほぼ毎回欠かさず訪れる展示会の一つであるが、回を重ねるたびに規模が縮小されている感がある。おそらく前回の2012年の展示会にはそれが顕著に表れた時であろう。リーマンショック後の世界的な景気低迷やユーロ危機に、木工機械業界も停滞を余儀なくされた時期であった。それに加えて、イタリアを代表する木工機械メーカーであるSCM、ビエッセ、チェフラなどがキシレクスポに参加せず単独で展示会を開いた。前回のキシレクスポはそういった厳しい状況の中で開催されていた。
  
        
  ホール入口
 しかしながら、今年のキシレクスポには期待ができる!そう思ったのは、「前回出展していなかったメーカーがカムバックする」というニュースが展示会前から次々に舞い込んでいたからだ。ビエッセ、チェフラ、カサディがキシレクスポに帰ってきた。SCMは今回も参加を見送ったが、SCMグループのSuperficiとCMSが出展を決めていた。
  
       
Superfici(SCMグループ)
 展示会の規模としては、前回の4ホールから3ホールに減った。しかし前回は4ホールといえども各ホールに大きな空きスペースが目立っていたが、今回はびっしり3ホールに埋まっている印象を受けた。「出品者の数に大きな増減はないが、各メーカーのコマ数が少しずつ減った。それが全体の規模を縮小させた」と事務局のルカ・ロセッティは語っていた。
会場内を見てみよう
 さて展示会場内を見てみよう。ホール1と3は隣接しており、主にパネル加工や塗装仕上げ関連の機械が展示されている。ホールに入ってすぐの一番目立つ場所に展示しているのは、ホール1がビエッセ、ホール3がチェフラ。今回カムバックした2社が大きな展示スペースを設けている。展示会事務局側の歓迎ぶりと期待感が窺われる。また入場券のケースの紐にビエッセのロゴが入っていることを考えても、ビエッセの今展示会の貢献度は大きい。
 ホール3の中央に展示しているのは”HOMAG CITY”と入口に看板を掲げるホマッグ。こちらも先の2社に劣らず大きな展示スペースを設けており、ヨーロッパにおけるドイツの大手木工機械メーカーとしての地位を主張している。それでも、このホールで一番の賑わいを見せていたのはビエッセである。全出品者の中で一番の機械展示台数を誇るのと同時に、他のブースと比べて来場者の多さ、商談ブースの混雑ぶりはダントツであった。ビエッセ、ホマッグ共にプレス発表が行われたのでその模様は後述する。
  
          ビエッセ
  
          チェフラ
  
          ホマッグ
 ホール2は、主に無垢材加工向けの機械が集まっていた。ビエッセやホマッグほど大きな展示スペースを設けているメーカーは少ないが、今回カムバックしたSCMグループのCMSがバレストリーニの新しいCNCワーキングセンターを数台展示し、来場者の注目を浴びていた。脚物加工用のCNCワーキングセンターのメーカーPADEやBACCIも従来のCNCを更に進化させた高速タイプの加工機を発表していた。その他ヴァイニッヒやフェルダーなどもそれぞれ来場者を集め、賑わいをみせていた。
  
           PADE
  
        CMSのパレストリーニ
 今回の展示会には、日本勢の木工機械メーカーの出展は無しという寂しい結果。この展示会の重要性を認識していないのか、ヨーロッパ勢に対抗する新しい機械、革新的な提案ができないのか。前回は台湾のメーカーが力を入れて出展していたが、今回は台湾メーカーも非常に少なかった。この展示会の直前に台北で木工機械展が開催されていたが、お粗末と言えるほどここにも出展メーカーはいなかった。台湾のメーカーどこに行ったのか?その他、中国、東欧、ロシアからも数社ではあるが出展が見られた。

   
         
乗れるかな!?
ホマッグプレス発表
 ホマッグのプレス発表が展示会場とは別棟で行われた。イタリア経済は2013年後半から回復の兆しを見せ始め、2014年には少しずつではあるが転換期に差し掛かっていると期待している。家具業界においては4月に開催されたミラノ・サローネ展、それに引き続くキシレクスポはイタリアのマーケットにおいてキーとなる重要なイベントであり、今後の業況を大きく左右すると考えている。
 キシレクスポでは家具プラント一つの一連の機械を展示し、1シフト1000個のパーツを生産する製造ラインを提案。
 エッジバンダーKFL350は、バーコードで次の部材を自動認識しレーザーテックを使うか従来のホットメルトを使うかを判断する機能が付いている。毎分30mのスピードで、部材間は400㎜の間隔で投入が可能である。エッジバンダーの後、ボーリングマシンABL220がフレキシブルなルーター加工と高速ボーリングし、加工された部材は梱包機VKS200へと送られる。
 最新の機械制御インターフェースはタッチスクリーンモニター「TOUCH」を採用している。さらに新しいヘルプアシスト機能を搭載し、全てのホッマッグマシンが同じ制御コンセプトを享受できるよう標準装備されている。
 ソフトでは、「woodWOP7」が最新機能を備え、よりシンプルで信頼性のあるものに仕上がった。
  

             ホマッグプレス発表  
 ビエッセプレス発表
 ビエッセのプレス発表はビエッセブース内で行われ、各機械担当者の説明をイヤホンを耳にして聞くという形が取られた。
 ビエッセが開発するソフト「bSolid」は機械のNC制御をより単純化するという次のステップに進んでいる。「進化したソフトウェアを使って誰もが最新のテクノロジーに触れることができる。たいていのソフトは機械の能力を制約してしまうが、bSuiteはこれらの制約を全て取りのぞくことができる。」
 Rover B FTは新しいNCワークセンターで、FTワークテーブル上で、パネル、小さなドア、家具部材、ソファフレームなどのネスティング加工に対応している。Rover Kは特注品生産指向の小さなクラフトショップ向けのNC機であり、パネル加工も無垢材加工にも対応している。  ドアや窓枠加工用のWinline Oneは、高い生産能力を持つと同時に、柔軟性も兼ね備えた機械である。
 ビエッセが開発するソフト「bSolid」は機械のNC制御をより単純化するという次のステップに進んでいる。「進化したソフトウェアを使って誰もが最新のテクノロジーに触れることができる。たいていのソフトは機械の能力を制約してしまうが、bSuiteはこれらの制約を全て取りのぞくことができる。」
 Rover B FTは新しいNCワークセンターで、FTワークテーブル上で、パネル、小さなドア、家具部材、ソファフレームなどのネスティング加工に対応している。Rover Kは特注品生産指向の小さなクラフトショップ向けのNC機であり、パネル加工も無垢材加工にも対応している。
 ドアや窓枠加工用のWinline Oneは、高い生産能力を持つと同時に、柔軟性も兼ね備えた機械である。
  
          
ビエッセプレス発表
イノベーションアワード
 展示会2日目の14日夕方、ホール2において「イノベーションアワード」が発表された。この厳しい経済状況の下、研究開発に力を入れ優れた技術革新を提案した企業に贈られる賞である。2部門あり、一つは「イノベーション部門」で製造技術に革新をもたらした機械もしくは技術に贈られる。
 もう一つは「コミュニケーション部門」でソーシャルメディアにフォーカスし、積極的かつ効果的に広告キャンペーンを打ち出したり、メディアに対しアプローチしてきた活動に対して贈られる。賞の選出は、記者たちによる投票で行われた。
 各賞の受賞者
►「イノベーション部門」
 1位ホマッグ(8票)、2位ビエッセ(7票)、3位チェフラ(6票)
►「コミュニケーション部門」
 1位サルバドール(17票)、2位ホマッグ(10票)、3位ビエッセ(9票)
 イノベーション部門で1位、コミュニケーション部門で2位を受賞したホマッグは受賞後、「ビエッセ、チェフラがキシレクスポに帰ってきてくれて嬉しい。そして、共にこのような栄誉ある賞を受賞できたことを誇らしく思う」とコメントした。
  
      
イノベーションアワード受賞者たち
展示会総評
 ビエッセがキシレクスポに戻ってきたことがやはり大きかった。集客力、宣伝力、そしてもちろん技術力、全てにおいて他メーカーを圧倒していた。イタリアで開催される展示会はイタリアのメーカー主体で行われるべきで、これがホマッグやヴァイニッヒではいけない。そういう意味でビエッセがいるキシレクスポは成功に終わったと思う。次回の展示会に向けて、もう一つのビッグメーカーであるSCMの動きが気になるところである。SCMは今年も独自の個展を地元リミニで開催した。
 時期をミラノ・サローネ家具展にぶつけてきた。サローネのお客さんをリミニに引っ張るためにシャトルバスも運行した。SCM本社ショールームで開催された展示会は人でごった返し、昼時の食堂に続く列は延々と長蛇の列を作ったという。外野から見ても、SCMがキシレクスポに戻れば俄然盛り上がると思う。
 2年後の展示会に向けて、気になるのはイタリア、そしてヨーロッパの経済状況である。アチミルも今後のイタリア経済の好転を示唆しているが、まだまだ厳しい局面の中にいる。事務局のルカ・ロセッティ氏も「イタリア経済は底の底にいる。イタリアの政局も安定せず、経済が回復するにはまだ時間がかかる」と慎重な意見を言っていた。
 大手機械メーカーは生産拠点を他国に移す傾向にある。アジア向けに中国に生産拠点を置いたメーカーは多い。機械制御は複雑になり、メーカー技術者に求められるスキルも高度化し、さらにエンドユーザーの要求は多様化、複雑化している中、高コスト化がメーカーの頭を悩ませている。一方で需要低迷による低価格での競争がより激化し、コストの板挟みになっている面がある。メーカーがグループ化し巨大化している傾向があるが、小規模メーカー、財務内容の厳しいメーカーなどがグループ企業に吸収される場面も増加していくのではないかと思われる。
 ところで、日本はどうか?先程も書いたが今展示会での日本メーカーの出展は0社だった。ヨーロッパ勢が厳しい中でも次々と高性能、高速度の機械を発表しているのに対し、日本のメーカーは追いかけることすら諦めている感がある。研究開発のスピードはウサギとカメほどの差がある。日本のメーカーは、日本の小さな小さな市場の中でしか生きていくことを考えていないのではないかと思ってしまう。
寂しかった出展ゼロ
 今回の展示会で日本人の姿をちらほら見かけた。大手家具メーカーさんの姿もあった。日本の機械では物足りず、ヨーロッパの機械に求めるものがあるのだと思う。その求めるものとは生産性であったり、複雑化した加工の精度や生産工程の合理化であったりする。日本にないものがここヨーロッパにある。
 次回の展示会が楽しみだ。新しい技術が生まれ、新しい機械が生まれ、そこに新たな可能性やチャンスが生まれる。そんな期待感を常にこの展示会は持っている。
寄 稿
ホール見て歩き
野田 正峰(株式会社コーエキ)
 イタリア・ミラノでキシレクスポ(Xylexpo)2014が5月13日から17日までの5日間
開催された。そのうち14日と15日の2日間に亘り展示会を訪れた。イタリアは夏を
迎える前の清々しい季節で、両日共に快晴に恵まれた。