集成材メーカー大手の銘建工業㈱(岡山県真庭市勝山1209、中島浩一郎社長)が主体となって、高知県並びに同県長岡郡大豊町の補助金と地域の事業協力を得て2012(平成24)年1月から高知自動車道の大豊インターチェンジに近い川口南農工団地内の一部家具工場跡利用と効率的な大型製材工場の整備を進めていた「高知おおとよ製材株式会社」(高知県長岡郡大豊町川口2035-1、中島浩一郎社長、TEL0887-70-0020)が、2013(平成25)年8月26日に完成し操業を開始した。
 操業後の昨年12月中旬に、岡山から特急で約二時間の同社を訪ねて新工場と、国内初のCLT(Cross Laminated Timber)を構造躯体に使い2014(平成26)年春完成を目途に建設を進めている社員寮(既報)を、岡田繁取締役工場長に案内してもらった。岡田工場長は2011(平成23)年から銘建工業で、当工場建設を立ち上げる計画時から携わってきたという。

 インタビュー岡田工場長に聞く
 “地産外商”をモットーに
  製品の良さを


 工場建設予定地の高知県嶺北地域は森林資源が豊なことで知られ、県面積の84%を森林に覆われ、民有林と国有林を合わせて蓄積量は約1億8千万㎥(全国第5位)の森林を有する資源豊富な県であることから、素材について計画の上で何ら心配することはありませんでした。
 まず、この豊かな森林資源を活用し地元に密着した形で素材を量的に有効利用する検討から始めた。生産品目について、集成材いわゆるエンジニアリングウッドの生産は工場が山間部に位置するため輸送コストがかかることで、まず避けようと当初の計画から集成材生産は外した。では今後の製品の需要先から木造住宅の構造材を検討した結果、住宅に使用する部材の全てをこの工場で生産が可能なうえ、一本の原木を無駄なく活かす工場に集約した製材ラインを主題に計画しました。
 工場のラインは、素材をムダなく活かす多種類の製品に対応できる木取りライン構成になっています。さらに特徴のある製品づくりとして、新型の高温乾燥機E-dryⅢ(エノ産業製)を導入して、変色、表面割れ、内部割れがない、乾燥強度や品質に拘った柱、土台、平角を独自検査による安定製品を主力に羽柄材に至るまでトータルに生産しています。マーケットは、首都圏は言うに及ばず全国を対象に“地産外商”をモットーに製品の良さでアピールしていきたいと思っています。
 生産量については、初年度はスギ8割とヒノキ2割の原木ベースで約5万㎥の製材生産に45人のスタッフ(地元雇用40人)が1シフト体制で、売り上げ約10億円を計画目標に、3年目に入る2016(平成28)年には、原木ベースで約10万立方メートル、60人のスタッフ(同55人)が2シフト体制に、売り上げ約21億円を目指しています。ちなみにフル操業時には、四国最大級の生産量を上げる工場となるように励んでいます。合わせて地域への貢献と従業員の幸せを最優先に考えています。さらにバイオマス発電を視野に入れながら、木材の無駄を一切出さない利活用によりコスト意識はもとより、収益の分配を山元に還元できる循環システムの構築も視野に入れ鋭意推し進めていきたいと思います。この恵み豊かな森林資源を活用し、従業員は“新しい切り口へのチャレンジ”を合言葉に“チームおおとよ”を掲げ全員力を合わせて運営と地域になくてはならない工場づくりを目指し幸せを希求していきます。
 ただ業務に携わって素朴に思うことは、木材価格はセリによって変動するため、原木需要が高まると仕入れ価格が高くなるという反作用は、これまでの輸入材に対抗して伐期に入った国産材、特に杉の需要拡大のお題目のもとに、工場側は投資を図って工業製品として、消費者に安定した高品質な製品を供給する社会的使命を全うするため安定した経営を一番に考えています。しかし、仕入れ価格が変動する不安定なことは地元に収益還元どころか、初志の地域貢献理念からも最も好ましくない要因をつくる一つと思っています。“木の国”をキャッチフレーズにするなら“営々と続くセリ商法”は、銘木ならいざ知らず、如何に量をこなす工場の収益を圧迫し左右しているかを行政はみて欲しいところです。

プロフィール
おかだ しげる
昭和30年 岩手県盛岡市生まれ
同、54年 筑波大学卒業 言語学専攻
趣味 ジョギング、囲碁と11か国の言語学を自習中

事業の概要
・木材加工流通施設整備事業(機械設備、乾燥設備、付帯設備関連など):2,314,376千円
・企業立地施設整備事業(テント倉庫、既存建物改造、建物棟基礎、付帯関連整備):432,477千円
・工場立地関連事業(事業主体・大豊町)総事業費:999,682千円

会社概要
設立:2012(平成24)年1月24日
資本金:97,000千円
株 主
銘建工業株式会社 :       56,000千円
高知県森林組合連合会:     27,000千円
大豊町:            12,000千円
高知県素材生産業協同組合連合会:2,000千円
役 員
代表取締役社長 中島浩一郎(銘建工業㈱代表取締役社長)
取締役 戸田 文友(高知県森林組合連合会代表理事会長)
取締役 岩﨑 憲郎(大豊町長)
取締役 田口 克之(銘建工業㈱代表取締役専務)
取締役 岡田 繁(高知県おおとよ製材㈱取締役工場長)
監査役 川井喜久博(高知県素材生産業協同組合連合会代表理事)
監査役 安東 真吾(銘建工業㈱取締役総務部長)
工場敷地面積:38,883㎡
工場規模(鉄骨平屋):10,420㎡
主要材:杉80%、桧20%

製品内訳 柱、土台:20%
     平角など構造材:40%
     羽柄材など:30~40%
案内をしてくれた岡田工場長
原木投入
製材機械 ツインセンターソー (㈱シーケーエス・チューキ)
ソーヤ21 ツインソー (〃)
ソーヤ21 ツインソー (〃)
ツイン台車とシングルセンターソー (〃)
シングルセンターソー (〃)
ウルトラマルチチッパー (〃)
チップヤード (〃)
15ブースビーンソーター (㈱ 鈴 工)
板材用全自動サン積機 (㈱ 鈴 工)
角材用多段コンベアー及びサン積機 (〃)
板材用バッファーコンベア ー (〃)
はい積場にはスギ・ヒノキの15~36cm径級が
提供写真
高温乾燥機E-dryⅢ 12基 (エノ産業㈱)
中温乾燥機 6基 (エノ産業㈱)
モルダー 24HS-6軸 (トップスペック㈱)
モルダー 30-3軸 (〃)
モルダー 24-5軸 (〃)
ボイラ燃料供給装置 (乾燥切削廃材)400㎥ (井上電設㈱)
ボイラ燃料供給装置 (破砕バーク・チップ)50㎥ (井上電設㈱)
ボイラ 10t/h (㈱タカハシキカン)
ちょっとメモ
大杉駅の昼と夜
 ホームは島式1面2線である。下り列車(高知方面行き)のみ追い越し可能な構造となっている。駅舎は地上駅舎で、業務委託駅である。杉材を使用した名物駅舎があったが、2004年1月2日に焼失したため、大豊町立大杉中学校の生徒たちが駅舎の再建に関わって、2005年3月12日に大豊町つどいの広場「とまレール大杉」として再建された。
(ウィキペディア)
 大杉駅
大豊町の紹介
 大豊町(おおとよちょう)は、長岡郡にある人口約4,250人の町。2009(平成21)年現在、四国地方で唯一65歳以上比率が50%を越える「限界自治体」*である。2013(平成25)年10月1日時点の老年人口割合は55%である。
(ウィキペディア)
*げんかい‐じちたい:65歳以上の高齢者が人口の50%を超え、税収入の低下と高齢者医療、高齢者福祉の負担増で財政の維持が困難になった自治体。
↓限界集落
社会学者の大野晃(当時高知大学教授)が1991(平成3)年に提唱。
(デジタル大辞泉)
 大豊町 
 杉の大杉 
事務所棟
Woodfast-14.1
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夜の大杉駅
駅舎
駅前風景
目視による検品作業の様子
(〃)
テント倉庫棟960㎡
保管倉庫棟1,179㎡